特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし34:間違いだらけの肛門科選び(2)

今回は、腕の良い痔の専門医を見つけるコツについて話したいと思います。

まず第一に、多くの患者さんが思う事は、
『立派な建物の病院が良いのではないか』
という事。確かに
【治療が良い】⇒【患者が集まる】⇒【病院が儲かる】⇒【立派な病院を建てられる】
という図式が当てはまるケースもあるだろう。

しかし、患者さんが“良い治療”と信じているものが、全て本当に良い治療である保証は無い。
たとえば、手術する必要のない軽い痔を手術すれば、術後の経過も順調(傷が小さいから当然痛くないよね)で、病院も手術代が入るというウインウイン【win-win】の関係が成り立っている場合だってあるだろう。
それに銀行は名医だから大金を貸してくれるわけではないから、経営者の度胸と手腕で立派な病院を建てることはできる。

次に挙げられるとしたら、
『専門医の資格があるか』
という事。
大腸肛門科医師として取るべき資格の代表的なものとして、日本大腸肛門病学会専門医というものがあり、学会のホームページでも一般の人に公開している。
http://www.coloproctology.gr.jp/doctor/

Dr.OKもこの資格を取っているが、ちょっとした問題がある。
この学会には、肛門の手術を実際にやっている医師だけではなく、大腸外科を専門として大腸癌の手術が得意な(痔の手術はあまりやったことがない)外科医や、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の治療を熱心に行っている内科の先生も参加している。
大腸肛門病学会の専門医試験は、それまでの臨床経験を書類審査し、さらに最近では筆記試験(Dr.OKのころは口頭試問(^^ゞのみ)で行なわれているが、書類審査内容も試験も肛門外科、大腸外科、大腸肛門内科が別々に行われていて
【日本大腸肛門病学会専門医】=【痔の手術の名人】
という事には、残念ながらならないことにある。

では、患者さんはどうしたら【痔の手術の名人】を見分けることができるのだろうか。
一つは、信頼できる医師に紹介してもらう事。
やはり、一般の人が知っているよりは医師仲間の方が情報を正確に持っていると思うが、これも肛門科というものにそれほど興味がない先生だと、仲間内で流行っている病院を紹介する程度の情報であることもある。

二つ目としては、病院のホームページで丹念に医師の経歴を調べる事。
いくら、大学や大きな病院で活躍していたところで、それが必ずしも痔の手術に熟達していることにはならない。
特に大学病院で痔の治療を熱心にやっているところは皆無に近く(だって、泌尿器科の医局はあるけど、肛門科は無いからね)、痔の治療で有名な病院にどのくらい長く勤めていたかという方が、まだしも指標になるというものである。

三つ目に、遠慮なくDr.OKにメールで問い合わせください。
dr-ok@mtg.biglobe.ne.jp
Dr.OKが長年修行していた社会保険中央総合病院大腸肛門病センターには、全国から熱心な医師が痔の手術を勉強するためにやってくる病院だから、一緒に働いた上で信用できる【痔の手術の名人】を何人か知っていますからね!(^^)!
ただし、少しぐらい遠くても通院するくらいの覚悟はいりますから、そのつもりでね!(^^)!

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし33:間違いだらけの肛門科選び(1)

電子メールで医療相談をやっていて結構多いのが、
「東京までは行けませんので、私の住んでいる町の近くに推薦いただける肛門科は有りませんか?」
というもの。

大腸肛門科を専門として四半世紀になり、多くの肛門科医とも知り合いとなったが、本当に手術が上手いのか、なかなか見抜くことはできない。
というか、機会がない。
とても性格が良くって人間的に素晴らしい先生であっても、手術の上手い下手までわかるわけではない。

以前の学会で「侵襲の少ない痔核の手術」というような発表があった。
痔核の手術で注意することとして、過大な切除を行わないことがある。痔核の組織を取りすぎると、傷がなかなか治らなかったり、治ってから肛門が狭くなり患者さんを苦しめる結果となってしまう。

発表されているビデオを観ていて、どうも痔核を剥がす層が深すぎるのではないかと感じた。
ビデオでは痔核を取ると、その下にある括約筋が露出しているのである。
括約筋に切り込んだら、それこそ便が漏れてしまう恐れもあるけど、表面が露出するのは、私としては切除する層が深すぎるのではないかと感じた。

発表が終わって、質問の時間になったので、おもむろに手を挙げて質問した。
「見せていただいた手術では、括約筋が見えていたようですが、先生の施設ではそのような層で痔核を切除することが普通に行われているのでしょうか?」

発表した医師は、まだ若く、私としては積極的に深い層で切除したわけではなく、ビデオ撮影の際にそこまで気づかなかっただけかと思ったのである。
質問を受けた若い医師が返答に詰まっていると、会場から
「共同演者の〇〇です」
と言って、私も良く知っている同年代の先生が答えた。
「私どもの施設では、このビデオで示したような手術が標準的に行われています。」

自分としては「このビデオでは、ちょっと剥離層が深すぎると思いますが、いつもはもっと浅い層で、括約筋が露出しないように切除しています」
という回答を期待していたのだが、期待外れであった。

全国的に有名な肛門科病院で、もちろんこの手術方法で大きな問題もなく治療は成功しているのだが、より良い手術法を求めようとする貪欲さが欠如しているのではないだろうか。

それではいったい、一般の人が安心して手術を受けられる医師を見つけるにはどうしたら良いのであろうか。

次回に続く・・・

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし32:良性だから慎重を期すべき手術適応

痔核(いぼ痔)は良性の病気である。
「病気に良性も悪性もあるものか!」
と実際にお悩みの皆様には申し訳ないことだが、現代の医療は癌の治療を中心に発展してきたので、癌は放置していると死ぬから『悪性』それ以外を『良性』と便宜的に呼んでいるだけで、決して良性だから治療しなくても良いという事ではない。

ただ、痔が腫れようと、少々出血しようと、排便のたびに
「いよっ、大将!ごきげん麗しく!!」
と、お出まししようとも患者さんが
「これでいいのだ!」
とおっしゃれば、医者は
「そうですかぁ」
とすごすご引っ込むしかない病気である。
進行大腸がんのように
「あんた、切らなきゃ死ぬよ!!」
なんて、医者が脅すように説得する一幕は有り得ないのである。

従って、痔核の治療にあたって
「先生、切らなくちゃいけないんでしょうか」
という患者さんの質問に対して
「そりゃ、治そうと思ったら切らなくちゃいけないけど・・・」
というのが、真の正解である。
しかし、しかしですよ
「そりゃ、切らなきゃいけません」
と言い切る医者がいるとしたらそれは
『病院の経営のために・・・』
という一言が隠れている場合がかなりあるのではないか?。

最近、まさにそれに相当するのではないかと思われる患者さんにお目にかかった。
その患者さんは
(1) 今まで、肛門の病気を思わせる症状は何もなかった。
(2) 急におしりに痛みを覚えたので触ると、ぷっくりと腫れていた。
(3) 腫れてから数日で少量の出血があって、今では痛みはほとんど感じなくなった。
という経過を有する。
とある肛門科を標榜する病院を受診したら院長から
「3日間の入院で手術が必要」
と診断され「仕事が忙しくて休めないから」という事でセカンドオピニオンを求めてDr.OKの外来にやってきたのである。

話を聞いただけで「血栓性外痔核だな」と見当をつけておしりを診察すると、見事鎮座ましますソラマメ大の血栓性外痔核があった。
少量の出血があったのは、腫れた痔核の皮膚が破れて、中の血栓が溶けて出てきているわけである。したがって出血の色は暗赤色で、大量に出血することはない。
画像

【参考写真】腫れている部分が血栓性外痔核で、真ん中の部分は皮膚が破れて血栓が顔を出している。

患者さんに
「入院する必要はないけど、せっかく血栓が顔を出しているんだから、早く治るように処置しましょう。」
と提案し、やにわに鉗子をつかんで血栓をほじくり出して、治療完了である。

もちろん、この処置だって患者さんが
「先生良いですわ。処置にはお金かかるし、ほっておいても治るんだったら気長にやりますから。」
とおっしゃれば
「それもそうですね。別に腫れていても痛いわけじゃないから、気にならないのならそのままでいいですよ、おだいじに!(^^)!」
と、そのまま帰ってもらおうとすると
「先生、薬は出ないんですか、軟膏とか」
と患者さんがのたまう。
「痛くないなら、別に薬を付けたって早く治るわけじゃないから、付けなくてもいいですよ」
と答えると、約半数の患者さんは
「でも先生、気休めでも薬があると安心ですから」
なんてやり取りがあって、処方箋を出すこともある。

良性疾患はあくまで患者さんの考え方を優先すべきで、決して強引に手術すべき病気ではないのである。
それを金儲けのために手術を勧めるなんて、もってのほか!!!
だって、手術というものは薬以上に『副作用』があるのだからね(^^)v

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし31:大腸内視鏡検査の必要性


『おしりから出血して・・・』
これが、肛門科を訪れる患者さんの一番多い訴えである。

「痔が悪いんだろうなぁ」
患者さんの大部分も、そう考えて来院されるようだが、中には
「ひょっとしたら大腸癌かもしれない」
という不安を、心の隅に抱えていらっしゃる患者さんもいるようである。

実際に診察してみて、出血部位がはっきりわかることは意外に少ない。
「痔の血管が膨れていて、おそらくここから出血するんだろうなぁ」
と判断して
「とりあえず、一週間軟膏で治療してみましょう」
という事になる。

ここでの最大の心配は、大腸癌を見落とす事。
痔を大腸癌と誤診していても、
「いやぁ、癌でなくて良かったですね(^^)v」
で済む(済まんかもしれん)が、大腸癌を痔と誤診したら大変なことになる。
中には、大きな脱肛する痔核があって手術したのに、ちっとも出血が無くならない。
念のために大腸の検査をしたら、「指が届くほんの数㎝奥に直腸癌が潜んでいた」なんてことも、肛門科専門医ならほとんどの人が経験していることだと思う。

いきおい、おしりから出血する患者さんは大腸の検査をお勧めしたくなる。

実際に大腸癌というと40歳以上が大部分で30歳以下は「若年性大腸癌」と呼ばれ、まれな病気として学会でも発表されるくらいである。
しかし、大腸癌は【線種】れる良性のポリープがゆっくりゆっくり育っていって、【腺癌】と呼ばれる大腸癌になるとされているので、良性のうちに退治したければ、癌年齢と呼ばれる以前の人たちにも一回は検査をしておいた方が無難なのである。

「念のために、大腸の検査をしておきませんか?」
という提案の中には、これだけの『心配』と『責任』が含まれているのである。

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし30:日帰り手術の必要性

前回、『なぜ、痔の手術をしたら入院が必要か?』というはなしをしましたが、今回は「入院ができない、したくない」という患者様のニーズに答えるがごとく、日帰り手術についてお話しします。

日帰り手術は、特殊な最先端の特殊な器具や薬を使って、痛みも術後の出血もなく、翌日から普通に生活できるかと思うと、そうではない。

かつて、痔を腐らせて取る注射療法や凍らせて治す凍結療法が日帰りでできる処置として普及していた時代がありました。
その当時の手術は、今とは違って肛門を大きく切って縫う方法だったから、文字通り「三日三晩あぶら汗を流す痛みで、上を向いて寝ることもできなかった」わけで、この注射療法や凍結療法が一世を風靡したのです。
それが、手術方法の進歩によって、痛みの問題がさほどでもなくなったので、肛門が狭くなったり変形する後遺症が問題となっていた注射療法や凍結療法を行う病院は影をひそめてしまったのです。

また、レーザーメスを使うと「痛みや出血がない」という事で、それを希望する患者さんがいらっしゃいますが、残念なことにそれほどの効果はありません。
少なくとも、肛門外科を専門に取り扱っている日本大腸肛門病学会で推奨されたという記憶がない。
まっ、レーザーメスも進歩しているから、そんな夢のような器械が発明されたら早速購入しますけどね!(^^)!

要するに、日帰り手術というのは、入院手術のミニチュア版なのです。
それほどひどくない痔を小さい傷で治すとか、大きな痔であっても安全策を取って徹底的に攻め込まないとか、最近は痔を固めて治療する硬化剤を併用したりして、痛みや出血を最大限予防するとか、それぞれに工夫を凝らしているわけです。

はなしを戻して、日帰り手術の長所と短所についておはなししましょう。
【長所】
(1) 日程にやさしい。
病院に拘束されないのだから、患者さんの日常生活に支障をきたすことが少ない。
(2) お財布にやさしい。
入院費が無いわけなので、治療費がグッと抑えられる。
(3)人に知られずに手術できる。
「痔の手術をするから、休暇をください」と職場で話すことがためらわれる人にとっては、日帰りで手術ができるメリットは大きい。

【短所】
(1) 手術後に安静にしていないと、痛みが強くなる。
もちろん、強力な鎮痛剤や便を柔らかくする薬を処方しますが、痛みに対して最も効果があるのは、体を横にして安静にしていることです。長時間立ったり座っていたりすると血液が肛門にたまって、腫れや痛みの原因になります。
(2) 手術後の出血の管理は、自己責任で行う必要がある。
体を動かして肛門の安静が保てなかったり血圧が上がると、傷から出血する危険が高まります。
(3) 適応を誤ると、再発の可能性が大きくなる。
出血や痛みを少なくするために、入院手術より手控えた手術を行う必要があり、その「さじ加減」が最も難しいのです。

もちろん、手術の腕前が必要充分であることが前提であるのは言うまでもありませんけどね(^^)v

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし29:入院手術の必要性

25年間も大腸肛門科専門医をやっていると、患者さんの嗜好が微妙に変わってきていることが解る。

一番の変わったのは、入院期間。
かつては、
「先生、20日以上入院しないと、保険から入院費用が出ないから、20日入院させてください」
なんて依頼を時々患者さんから聞いたものである。
それが今では、
「7泊8日の入院手術が必要です。」
と言うと、
「何とか、もう少し短くなりませんか」
「じゃぁ、4泊5日」
「もう、一声!!」
なんて、バナナのたたき売り(←寅さんの映画でしか見たことないけど(^^ゞ)みたいな会話が交わされることもしばし・・・。

ここで、
「なぜ痔の手術をしたら入院が必要なんだ?」
という質問にお答えしよう。

痔の手術の場合、かつては手術方法にも問題があったのだが、術後とても痛い手術であった。
「術後三日三晩、上を向いて寝ることもできずに、脂汗を流しながら痛みに耐えなければならない」
という、今では都市伝説ともいえる話が伝わっている。

それが、手術術式が改善され、縫合糸などの材料も進歩して、傷を縫い合わせる手術が行えるようになった。
このことで、術後の痛みや出血が大幅に改善されたわけだが、ただそれが理想通りに経過しないこともある。

傷をきちんと縫ったところで、毎日便が出る肛門である。
途中で縫い目が裂けてしまう事もしばしば起こる。
そうなると、排便時の大出血。
肛門は、体表とは違って圧迫止血する事が出来ないから、時には1000ml位の出血を起こすこともある。
術後の大量出血が起こるのは、統計的に10日までが多いのだが、時には2週間もたってから起こることもある。
ここで、すべての患者さんに『2週間の入院手術』をお勧めしたら、手術ができる患者さんはほんの一握りになってしまう。
それで、最大級の妥協をして「7泊8日の手術」を採用している病院が多い。

しかし世の中には、「1週間も入院したら、仕事がなくなる」「年老いた両親の介護があって、一日たりとも家を空けられない」など、様々な理由で痔を抱えて我慢している患者さんも多い。
そんな患者さんのニーズに答えるためにも、手術術式の改善と緊急時の受け入れ態勢を整えるのが、今後の医療機関に要求される課題なのである。

日帰り手術の必要性については
http://blog.dr-ok.com/201309/article_2.html
で解説します。

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし28:雑誌の取材

久しぶりに、取材申し込みがあった。
以前、痔の治療で全国的に有名な社会保険中央総合病院に在籍していたころは、インターネットで痔のホームページ『Dr.OKのまじめなおしりのはなし』
http://www2b.biglobe.ne.jp/~dr-ok/
を日本で初めて開設し、患者さんの医療相談も無料でやっていたこともあり、しょっちゅう雑誌や新聞に取り上げられていた。
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今回は、患者さんとして訪れた方が偶然ライターであったため、取材申し込みがあった。
そのライターさん、急におしりが腫れて近くの病院にかかったら御多分に漏れず
『10日間で入院手術!』
と言われたそうである。
昔なら何の疑いもなく手術されたであろうが、インターネットで情報が公開されている現代、いろいろ調べて「どうもおかしい?」と思ったようである。

大腸肛門病学会の一般向けの情報だって、かつて私が書いた「急におしりが腫れた方へ」という記事があるくらいである。
http://www.coloproctology.gr.jp/topics/2005/02/21/post-1.php

その記事を読んだか読まなかったかは定かではないが、セカンドオピニオンを得ようとやってきたという次第。
カルテの記録によると、血栓性外痔核である。
手術しなくても治ることの説明を受け、納得して帰っていただいた。

雑誌の名前は健康雑誌『素晴らしい一日』というそうだ。
まだまだ、ネットの情報を得ることができない患者さんが多い世の中、体験談に基づいた活字情報の価値は捨てがたいものがある。
素晴らしい記事ができることを期待したい。