特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし41:痔の術後管理

「手術は麻酔がかかっていて痛くないのはわかるけど、麻酔がさめたら痛いんじゃないんですか?」
「昔、手術を受けた知り合いが『三日三晩、痛みで脂汗が出て地獄の日々だった』なんて脅かすんですけど大丈夫ですか?」
手術を覚悟して治療計画書を書いている時点で、時々聞かれる質問である。

そこはやはり『餅は餅屋』と言われるように、肛門科専門病院としての様々なノウハウがある。

まず、手術が終わった時点。
肛門の中の傷から出血すると、直腸に血液が溜まって下痢のように大出血することがある。それこそ一面血の海となるくらい大量の出血で患者さんも意識が無くなり、こちらも気が遠くなりそうになるところをぐっとこらえて、深夜の止血処置を行うような事態になる事もある。

そういう事態を恐れて、手術が終了してまだ麻酔が効いている事を利用して肛門内にチクワくらいに筒状にしたガーゼを入れる習慣があった。
麻酔がさめるにしたがって括約筋がギュッとしまることになり止血効果が生じるのだが、傷の痛みを出す『効果』も抜群である。
翌朝、麻酔が完全にさめた状態でこの筒状ガーゼを抜く作業中は、患者さんも歯を食いしばっていることがわかる。

そこで肛門科のプロは傷の縫合に挑戦する。
「痔核の手術で傷を完全に縫うと肛門が腫れて痛い」という言い伝えがあるのだが、実際にそんなことはない。Dr.OKは完全に傷を縫合閉鎖して、痛みが少なく治るまでの時間が短い手術法を採用している。

次に問題になるのが、手術後の診察である。
外科手術の後の傷は、毎日消毒することがデフォルトとされてきたが、そんなことは一切しない。
だいたい便が出るところを消毒したところで、何の意味もない
肛門に指や器具を入れて診察することもやらない。
別に『メンドクサイ』からではなく、患者さんを痛がらせてまで得られる情報がないからである。
患者さんの訴えを聞き、腫れや出血がないか肛門を見て、軟膏を付けて
「お風呂に入って温めて、できるだけ安静にしていてください」
これだけで十分なのである。

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし40:おしりのかゆみにご用心

『チャパツ』という言葉が一般的になってしばらくしたころ「おしりがかゆい」といって私の外来を受診した男性がいた。
年恰好は20代前半で、最新のファッション(といっても思い出せないけど(^^ゞ)に身を包んで診察台に上がった。
おもむろに下着を下げ肛門を診て驚いた。肛門周囲の体毛が金色に光っているではないか!
『ケツ毛チャパツ!!』
と口には出さなかったけれど、ついにこんなところまでチャパツにするようなことが流行っているのだろうかと、おずおずと聞いてみた。
「清潔第一だから、オキシフルで消毒してるっす!」

最近の若い人は知らないだろうけど、その昔ヘアカラーなんてしゃれたものは使わず、オキシフルで洗髪して脱色するというワザを使っていた時代があった。
それを知ってるか知らないか知らないが、オキシフルで毎日おしりを拭いていた結果、体毛が脱色されてチャパツになっていたという事であった。

「かゆい原因は、オキシフルの刺激が強すぎて、皮膚が荒れているからですよ」
と説明し、湿疹用の軟膏で治療したという経験がある。

時は過ぎ、シャワートイレはついに高尾山(標高599m)のトイレまで普及している昨今だが、今までと違った『おしりのかゆみ』が登場してきた。
すなわち、洗いすぎによるかゆみである。

従来のおしりのかゆみは、排便後の始末が不十分で便によってかぶれているものが大部分だった。
もちろん、現在でもその手のかゆみは多いのだが、新たに洗いすぎることで皮膚の脂肪分が少なくなって荒れたり、皮膚の表面を保護している角質層が削り取られたりすることでかゆくなるのである。

ここでも『過ぎたるは及ばざるの如し』なのである。

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし39:機能温存手術痔核編3

痔核を縦方向(肛門の管の方向)に一つずつ取っていく結紮切除術にも欠点はあった。
痔核を切り取った部分の傷から、出血が起こったり、傷に便がつくことで痛みが生じた。
そこで開発されたのが、半閉鎖式結紮切除。
痔核を外の方から中へ向かって切り取り、一番奥の部分を結紮し(縛り)その糸を使って、痔核を切り取った後の傷を縫ってくる手術術式です。
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肛門の外の部分(グレー部分)は縫わないで傷を開けたままにしておくので『半閉鎖式』なのです。この傷の事を『ドレナージ創』と言います。

どうしてこの傷を残しておくかというと、痔の手術はバイ菌だらけの汚い部分で手術するので「バイ菌を縫いこんで化膿するのを防ぐため」と説明されてきました。
しかし、痛みを感じる肛門の外の皮膚の部分に、一か月以上治らない傷を持つことになるので、どうしても痛みを抱えたまま長期間過ごすことになってしまう。

そこで考え付いたのが、『完全閉鎖式結紮切除術』なのです。
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今まで、肛門の外に大きなドレナージ創を作らないと十分にドレナージ(バイ菌などの汚いものを洗い流す)することができないと信じられていました。
しかし傷の縫い方を工夫することで、縫い目の間から十分なドレナージをすることができ、化膿することなく短期間で傷を治すことができるようになりました。
もちろん、ドレナージ創は作らないので、手術後の痛みが少ないのは言うまでもありません。


特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし38:機能温存手術痔核編2

古典的痔核の手術というと、1882年に発表されたWhitehead (ホワイトヘッド)手術が代表選手です。
痔核ができる範囲(肛門の入り口から3cm位奥まで)を、短いリング状に切り取り、外の皮膚と、中の粘膜とを円形に一周縫い付けてしまう手術です。(AとBを縫いつける)
痔核ができる部分を完全に、良く言えば予防的に切り取ってしまうわけですから、再発は絶対にしない。

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一見完璧な手術のように思えますが、ぐるっと縫い付けた傷が縮んで肛門が狭くなったり、
外の皮膚に引っ張られるように縫い付けられた直腸の粘膜が肛門の外まで出てくるようになったり、いわゆる術後後遺症の悩む患者さんも多かった手術法です。

しかし、この手術も名人が行えばきれいな肛門になるので、陰で泣く後遺症に悩む患者さんがいるにもかかわらず、 新しい手術にとってかわられるまでに約100年を要しました。

ホワイトヘッド手術にとってかわったのが、結紮切除法です。
これは、痔核を一つ一つ縦方向(肛門の外から中に向かう方向)に切除する手術法です。
ホワイトヘッド法と違って、どの部分を切り取ってどの部分を正常として残すかの判断が難しいので、判断を誤れば数年後再発する可能性がありますが、 「再発した痔核を手術する方が、ホワイトヘッド手術の後遺症よりマシ」という考え方が一般的になりました。
この手術の失敗例は、たいてい痔核を取りすぎたことによる「肛門狭窄」や「手術後難治創」です。 癌の手術のように「再発したら、外科医の負け」という意識で、徹底的に執ってしまおうとする認識が、最大の敵なのです。

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし37:機能温存手術痔核編1

痔の手術と聞くと
「手術すると、後遺症で便が漏れるという話を聞いた事があるんですけど」
とか
「痔の手術って、一回では治らないんですってね」
なんて言われる患者さんがいらっしゃる。

確かに、『下手な手術』をしたら、そういうような後遺症が残ることも否定はできないけど、肛門外科のプロとしては、絶対にそんな後遺症は残してはいけないし、可能な限り正常な肛門に近づけるような努力をしなければならない。

という事で、しばらく機能温存手術の解説をしたいと思いますが、今回は一番手術が多い『痔核(いぼ痔)』についてのお話を始めたいと思います。
【病変写真注意(かんとん痔核)】































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まず、手術の適応をしっかり定めなくちゃいけません。
手術をするという事は、それだけのデメリット(時間、費用、痛み、出血の危険性、術後の後遺症の可能性etc.)を十分考慮する必要があります。
特に痔核は命に関わる事のない「良性疾患」だから、患者さんが「ワシ、痔が出ても気にしてないけんね。ウ〇コした後に指で押し込んでおけば、一日中なーんも気にならんけんね。」と『けんねアタック』で攻められたら、「そりゃそうだがや」と名古屋弁で答えるしかないぢゃないですか(^^ゞ

間違っても、痔から出血して座薬を使って治療したけど、年に何回も診察にいらっしゃるから「こりゃ、手術せにゃいけませんな!!」なんて調子で、手術適応が決まってはいけないのである。
あくまで痔核の手術適応の原則は
「痔核が脱出して押し込まないと戻らない」∩「患者さんが手術をしてでも治したい
という二つの条件がそろった場合なのである。

このブログを最初からお読みの方は、痔核の正体は正常組織である痔静脈叢が大きくなったものであることはご存じだろう。その痔静脈叢の支えとなっている組織(支持組織)が緩んで血管が太く大きくなったり、位置を固定できなくなって肛門の外へ滑り出てくる状態が痔核であるという説(支持組織減弱説)が痔核発生の定説となっている。
従って、癌細胞のように異常な血管がどんどん増殖して大きくなるわけではないから、必要最小限の範囲で痔核を除すれば良いわけで、取りすぎは後遺症の元になる。
まさに
「過ぎたるは及ばざるに“如かず”」(やり過ぎは、やり足らないより悪い)
なのである。

そのような方針から見た痔核手術の変遷について、しばらくお付き合いしてください。
続く・・・



特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし36:学会顛末記

学会発表も無事おわり、この時期、ちょっと息抜きのDr.OKである。

今回の発表の主題は「だれでも簡単にできて、治るのが早い痔核の手術」という事だったが、そのテクニックの一つにドレナージ創について言及する部位があった。

肛門の手術は、汚染部位(人体の中で最も細菌数が多い肛門を扱う)の手術なので、傷に細菌がついて化膿する恐れがある。
外科的な常識だと、汚染された傷は縫ったとしても一部開放しておき、傷の中に入り込んだ細菌が体液で外に流される(これを、ドレナージされると言います)形にすることになっている。

従って、痔核の手術では、もともと痔核を切った後は切りっぱなしというか、そのまま周囲から粘膜が再生して傷が塞がれるのを待つ、開放術式が主流だった。
それで、傷に毎日便がつくので『痔の手術は痛くて・・・』と不評であった。

そこを、社会保険中央病院大腸肛門病センター(私は、そこで17年間痔の手術を学んだ)を中心として、肛門の内部の傷だけ溶ける糸で縫い合わせて、肛門の外にかかる部分は縫わずにそのままにしておく、半閉鎖式結紮切除術という痔核の手術を普及させてきた。
つまり縫い合わせた部分に残った細菌は、肛門の外に縫わずに残してある傷の部分をとおって体外に『ドレナージ』させるという方法である。

しかし、Dr.OKはこのことに疑問を持っていた。
同じ、肛門部分を手術する『皮膚弁移動術(裂肛の手術)』では、ドレナージ創は作らず、皮膚と粘膜を縫合しているではないか?!

大きなドレナージ創がなくても、縫った糸と糸の間から浸出液は出るので、それだけでドレナージ効果は十分なのではないかと考えた。

そこで、半閉鎖式結紮切除術のドレナージ創を徐々に小さくして行って、最終的には完全閉鎖してしまう『完全閉鎖式結紮切除術』を完成し、それをビデオに撮って発表したわけである。
傷を全て縫ってしまうのであるから、便がドレナージ創について痛むこともないし、傷も早く治るので患者さんの好評を得ることができた。

★ビデオについては、YouTubeで公開してあるので、まだ見ていない人は『サルケツ』で検索してください★

ところがである、かつて私の師匠であった先生が、私の発表の前日に教育講演というものを行って「肛門の手術は、十分なドレナージ創を作らなければいけない」との趣旨で講演したのであった・・・・
それに真っ向から反対する意見を、弟子である私が述べたのである。
ひょっとしたら、発表が終わってから大目玉を喰らうかもしれない思って発表に臨んだが、幸い師匠は他の用事があったのか、私の発表会場には姿を見せなかった。

今頃、話を聞いて怒っていらっしゃるかなぁ?
別の学会でお会いしたとき、笑顔で寄ってきて「奥田、ちょっと後でな・・・・」なんて言われたらどうしよう(^^ゞ

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし35:学会狂奏曲

大腸肛門科医にとって、秋といったら『学会の秋』
今年も、11月15日、16日の両日、日本大腸肛門病学会学術集会が東京で開かれした。
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学会と聞くと一般の人は、何か権威の象徴の様な博士が壇上で重大は発表を行い、終わったとたん聴衆が立ち上がって拍手する(スタンディング・オベーション)なんてシーンを、テレビドラマで見たことがあると思うけど、実際のところは『医者の文化祭』というようなところ。
スタンディング・オベーションなんて、見たことないぞ!

一年に一回、全国から仲間が集まってきてお互いの無事を確認し、楽しく会食をしたり、ついでにちょっと新しい知識を、講演やその間のロビーでも立ち話で得ることもできる。
なかなか病院から離れられない先生も、この日ばかりは皆明るい趣でウキウキしているのがわかるが、幸か不幸か携帯電話という文明の利器で、完全には切り離されることはない。

「とりあえず会費を払って、その後どこに行ったものかいっこうに会場に姿を見せないという怪しい行動をする先生もいらっしゃるのが医学会の実態である」なんて、内部告発か?!

Dr.OKも大手を振って病院を休むため(,_‘☆\ バキ
もとい、医学の発展に少しでも寄与するために、年に数回しか締めないネクタイを着用して、おごそかに発表した。
今年は、新しい手術の工夫をビデオで講演であった。

実は、前々からYouTubeで流してあったのだ。
http://www.youtube.com/watch?v=PriD_6nXGp8
こういう発表形式は、私は知っている範囲では初めてで、既に「文句ある」という人たちが、学会会場で手厳しい質問をしようと、手ぐすね引いて待っている事を期待していた。

「『サルケツ法』なんて、不謹慎なネーミングだ」
というクレームが出そうだけど、もちろん学会ではサルケツ法なんて口が裂けても言いません。
でも、大したことないものを、さも重要な事のように装ってその場シノギしている人がいると、ちょっと石を投げたくなるDr.OKの中のいたずら小僧が目をさますぢゃありませんか。

まっ、内容がイマイチであっても、せっかく見に来た人たちが少しでも楽しむことができるような工夫を新たに付け加えた内容で、ビデオを編集しました。
ビデオの最後に『ぢend』なんて、やっぱ、NGだろうなぁ。