特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし48:子供の痔

新患のカルテが回ってきて、名前の横の年齢が一桁だと緊張する。
「子供でも痔になる事ってあるんですか?」
まるで自分が重病にかかったかのように心配するお母さんと、泣き叫ぶ子供をなだめながら診察するには、かつて小児科の教授に教わった対応の仕方が役に立つ。

「診察のコツは、右手で子供の頭をなでて、心でお母さんの頭をなでるように」

そんなわけで、大人と違う緊張感が要求される『子供の痔』について・・・

【痔瘻】
小児期の痔瘻はめったにお目にかからないのですが、一歳未満の乳児に生じる『乳児痔瘻』という病気があります。
肛門の右や左に腫れものができて膿が出て、その後も腫れや排膿を繰り返すものです。
「痔瘻は手術しなくちゃ治らない」という話を聞いて、お母さんの心配はひとしおではありません。
しかしこの痔瘻は大人の痔瘻と違って、大部分は便が固まっておむつが取れるころには治ってしまいます。

【裂肛】
子供は成長のためにもエネルギーを使うので、体重に比して食事量が多く、便の量も多いのは容易に想像できます。
たいていの子供は十分に食物繊維も食べているので、『バナナのような』便が出ても大丈夫なのですが、中には野菜嫌いで食物繊維が不足しカチカチの便になる子供がいます。
カチカチのぶっとい便を出して肛門の皮膚(上皮)が切れてしまって、大泣きになる子供がお母さんに連れられてやってくる。
軟膏で治療すると共に、食物繊維の多い食品をとるようにすることが大切です。
野菜嫌いな子供には『寒天ゼリー』やクラッシュタイプの『こんにゃくゼリー』なども紹介しています。

【痔核】
大人では痔の病気の中で最も多いのですが、子供ではめったに見ることがありません。
子供の肛門の出口付近の周囲にある『外痔静脈叢』という血管の集まったところは、強くいきむと膨らむため、これをお母さんが気にして
「便をした後に、肛門の周りが腫れている」
と外来にいらっしゃいます。
子供の皮膚は薄いので肛門の出口の血管にドーナツ型に集まった血液が透けて見えることがありますが、しばらくしてもとに戻るのでそのまま腫れるようなことはなく病気ではありません。
先日、「肛門科人生25年」で初めて、子供の血栓性外痔核を治療したくらいです。


特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし47 最近のネット情報

インターネット上には玉石混淆の様々な情報が流れているが、こと医療情報についても同様である。
しかし、全く情報が手に入らなかった時代よりは、多くの情報を得て自分で判断できるほうが望ましいのではないだろうか。

かつて肛門科という言葉は口にすることもためらわれる『日陰者』であったから、どのような医療が、どのような基準によって行われているのか全く分からない「暗黒の世界」であった。

私が1996年にホームページを初めて、肛門疾患の情報を公開した時分は「繰り返し痔から出血したら、手術を行うべき」という考えがまかり通る時代であった。
痔の治療をするのは外科医で、『薬の治療で症状が取れなければ手術をすべき』という考えに支配されていたのである。
外科医にとって手術は腕の見せ所であり、手術も行わずに病気を治すことができなければ「外科医の負け」としてメンツにかかわると感じていた医者も大勢いたのだろう。

ネットで「繰り返し出血するから手術をするというのは間違いである」と書いたら、肛門科開業医の医者から「あなたは、病院経営について理解していない」という、ちょっとベクトルのずれた怒りのメールが送られてきたこともあった。

今では、多くの肛門外科医によって「手術の適応は痔核が脱出することにある」という情報が広められたおかげで、痔で手術を勧められた患者さんがセカンドオピニオンを求めて来院することも多くなった。

最近では、私の社会保険中央総合病院大腸肛門病センターの後輩にあたる肛門科医がブログを立ち上げ、日本の肛門病学の立役者であるわが師、隅越幸男先生の哲学を伝えてくれているのは大変うれしい限りである。
『過ぎたるは及ばざるにしかずだよ、佐々木君』
http://ameblo.jp/driwao/

後輩の活躍に刺激されて、私ももう一つ自分が勤務するクリニックのためのブログを始めた。
タイトルはズバリ【秋葉原の大腸肛門科】である。
http://akbsc.blogspot.jp/
検索用語が、秋葉原、肛門科、大腸肛門科などでヒットするように考えた。

なにはともあれ、日陰者であった肛門疾患が、だれの口からも堂々と語ることができる時代が来るように、情報公開を続けていくケツイを固めるDr.OKであった。

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし46:痔が出たら

患者さんの症状で『痔が出る』という人がいる。
肛門の形が飛び出した形になっている事を、そう表現しているわけである。

それに対して、どんな治療をするか気になるところである。
先輩患者の話を聞くと、
「痔が出たら、切らなきゃだめだと医者に言われた」
とか
「切らなくてもいいって言われたけど、いっこうに治らない」
とか、いろいろな説が飛び交っているが、これは『痔が出る』という表現の中に、いろいろな種類の痔が含まれていることに原因がある。

まず代表的なのは、【かんとん痔核】
これは、肛門の中や周囲の血管で血栓(血のカタマリ)ができて、急に腫れたもの。
ある日突然『出る』のが特徴で、激しい痛みを伴う。
治療法は医者の間でも議論があって、『すぐ切る派』と『薬で治す派』がある。
Dr.OKが原則『薬で治す派』なのは、切らなくても元の状態に戻る事が解っているから。

次に多いのが、【痔核が脱出(脱肛)】するもの。
これは、腫れているわけではないので痛みはほとんどない。
痔の血管部分が大きくなって支えきれなくなり、スライドするように肛門の外まで出てくるもの。
これは手術をしたり、注射による硬化療法を行わないと治らない。
ただ、治して痔とケツベツしたいか『人生のよき友』として付き合っていくかは、患者さんの気持ち次第。

三つは、スキンタッグ。
これは、肛門の周囲の皮膚がたわんで肛門の外からつまむことができるもの。
血管の成分が多ければ「外痔核」といっても良いけど、どちらともとれるグレーゾーンが多い。
これも、いくら薬を付けたところで小さくなることはない。
気になるから、局所麻酔をかけて切るしかありません。
ただ、これは病気とするかどうかは患者さんの気持ち次第。
成人の肛門は、赤ちゃんの肛門のようにツルツルなわけじゃないからね!(^^)!

それでは最後に、上の三つの『出る痔』を見てみたい人だけにお届けする「出る痔三態」
上から、かんとん痔核、痔の脱出、スキンタッグです。
自己責任で、画面をスクロールしてご覧ください。


































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特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし45:鍼治療

痔の患者さんに「昔、痔が腫れたときに鍼で治療したことがあるんですよ。」と伺った。大腸肛門病学会では一度も鍼治療についての発表は聞いたことがないが、足の裏に痔に効くツボがあるという話を聞いたことがあるので、さっそく『痔 鍼治療』でグーグル検索してみた。
中には検索結果の要約に
『病院で「手術しかない」と言われた方でも大丈夫です。』
というのがあるではないか。患者さんに身体的にも経済的にも負担をかけない治療法があれば理想的だと思うので、さっそくいくつかの鍼灸院のホームページを覗いてみた。

一番目を引いたのは、治療経過を写真に撮った症例報告。
かんとん痔核と思われる肛門周囲が大きく腫れあがった写真が載っていた。
説明によると、最初に肛門科を受診したら手術が必要と言われたが、手術を受けたくないので鍼灸院を受診したとの事。
週一回の治療で、三か月で完治した経過が解説されている。

「だが、待てよぉ。」
かんとん痔核というのは、痔の血管で血流障害が起こって血液が固まってたくさんの血栓を作り、肛門が急に腫れあがる病気である。
これを手術で切除するか、軟膏や座薬の治療で治すかは、医師によって考え方に違いがあるが、Dr.OKは原則的に手術はお勧めしていない。
痛みが強い時には薬を使うけど、その時期が過ぎたら何もしなくても腫れた肛門は徐々にひいて言って、三か月もたったら自然に元に戻ってしまうものなのである。

かんとん痔核のような手術をしなくても治る病気に、鍼治療を行ったから『手術をしなくても治すことができた』というのは、ちょっとなぁ・・・

かんとん痔核が鍼治療で治っていく写真は、こちらのページにあります。
http://www.ji1.jp/shourei_1.htm
それに対して、Dr.OKが薬の治療を行った症例写真はこちらです。そっくりでしょ!(^^)!
http://blog.dr-ok.com/201207/article_5.html





特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし44 治せない痔ろう

「痔瘻は、手術しなければ治せないよ」
と、キッパリ言い切る肛門科医は多いのですが、その反面、どんな名人が手術しても治せない痔ろうがあります。

【クローン病に合併した痔ろう】
Dr.OKがまだ体重80㎏だったころ(←なんのこっちゃ)、患者さんに無駄な体脂肪の無いトライアスロンの選手がいました。
「おしりの近くから、いつも膿が出るんです」
「膿が出ちゃ、海にも入れないよね」
なんて冗談をいいながら診察したら、ごく浅い単純痔瘻。
いつものように10分程度で手術は終わり、何の異常もなく退院されました。

ところが、その痔瘻の傷がなかなか治らない。
長くても2か月もすれば塞がるような傷が、いつまでたっても柔らかい肉に覆われたまま、傷の周りの皮膚が増殖してこない。

先輩から「ひょっとしたら、クローン病かもしれないから、内科で診てもらったら」とのアドバイスを受け、内科で小腸を調べてもらったら明らかなクローン病でした。

クローン病は、口から肛門までどこにでも生じる可能性のある炎症性疾患で、『スキップ病変』といって飛び飛びに生じることがあり、この患者さんも小腸で顕著なクローン病の炎症が肛門にもおよび、痔瘻を作っていたという事でした。

普通の痔瘻は、直腸粘膜と皮膚(正確には肛門上皮)との境目にある肛門腺という分泌腺の中に、便中の細菌が侵入する事によって発症すると考えられています。
従って、病巣を開放してやれば理屈としては治せるはず。
いかに括約筋へのダメージを少なくするかが、肛門科医の腕の見せ所です。

それとは違って、クローン病に合併する痔ろうは、クローン病の腸の炎症から潰瘍ができて、そこから感染していることが多いのです。
時に大きな括約筋より奥から痔瘻のトンネルが始まっているので、病巣を開放すると便が漏れるような重大な後遺症を残す事になってしまいます。
また、便の入り口になっている部分を縫ってふさごうと試みても、炎症が強くて癒合ができません。

肛門科医としては、シートンと呼ばれるゴムやシリコンの管を痔瘻に留置し、膿が溜まって腫れあがる事を防ぐ処置を行うのが、精いっぱいなのが現状です。

しかし、クローン病合併の痔瘻だからと言って落胆することなかれ!
クローン病の内科治療は日進月歩で、近い将来、完治できる時代が来ると思います。
そうなったら、痔瘻も治せることになるでしょう。

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし43:肛門異物



Facebookをやっていると、友達から様々な情報が伝えられる。
先日、歯科の先生から下記のようなネットニュースの記事を紹介された。
【尻に入れた電動マッサージ器が取れなくなった男が病院に駆け込む → 男「痔の治療のためにやった」 医師「効果はない」】
http://rocketnews24.com/2014/02/25/417291/

どうも、中国の記事の様だが「なるほど」の言い訳が興味を引く。

肛門科を標榜していると、忘れたころに「肛門内に異物が入って取れなくなった」と言う患者さんがやってくる。
直腸は決して『真直ぐ』な形ではなく、出口付近で後方に強く曲がっているので、この部分を通過して奥に入っている長いものは、容易に取り出すことはできない。
体にあいている穴に何かを入れたくなる欲求は、人間が本来持っている原始的な欲求なのだろうか、小児科の救急をやっていると鼻や耳に物を詰めて連れられてくる子供がいる。
長じて肛門に興味があるのも、その一環だろうか??

とは言え、直腸内に硬い異物が長時間入っていると、周囲の腸管を圧迫して穴があく恐れがある。穴があいたら細菌だらけの便が漏れ、細菌性腹膜炎から死に至る可能性大。
肛門から鉗子などを突っ込んでつまんで取れれば幸運だが、時にはお腹を切る手術を余儀なくされる場合もある。

私の経験では、瓶が取れなくなってやってきた人がいた。
曰く「お風呂上りにシリモチをついたら、瓶が肛門から入ってしまって・・・」
早速レントゲン撮影をしたら、特徴のある形のものが写っている。
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「ミツカンポン酢・・」
名古屋出身のDr.OKには、郷土の優良企業『ミツカン』の製品であることが一瞬にして判読できた。

特選!Dr.OKのまじめなおしりのはなし42:肛門鏡

大腸内視鏡検査を行うと、患者さんから
「痔の状態はどうでしたか?」
と聞かれることがある。
大腸は、空気を入れると風船のように膨らんで中の様子を観察できるが、肛門には括約筋と呼ばれるいつも締まっている筋肉があるので、空気を入れたくらいでは広がらない。
そこで、肛門を広げた状態で内部を見るために開発されたのが、『肛門鏡』という医療器具なのである。

医療業界では、様々な道具をまとめて『医療器械』と呼んでいて「おしりにキカイを入れますよ」なんて言い方をするので、患者さんは大きな『マシン』を入れられるような錯覚に襲われるが、実際には手のひらに収まるくらいの小さな器具なのである。

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上の写真は、ストランゲ型肛門鏡と呼ばれる、知る人ぞ知る肛門科専門医の間で使われている特殊な器械である。
左の先端部を肛門に当ててそっと挿入するのだが、よく見て解るように断面は円形ではない。これは、肛門の形が前後に長い楕円形なので、その形に合わせて断面も楕円形になっているのである。
この器具を肛門の中に挿入してから、右手にあるつまみをそっと開く。

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そうすると、楕円形の部分が実は貝が開くような構造になっていて、肛門括約筋を押し広げて内部を観察することができる。
別名『二枚貝式の肛門鏡』と呼ばれる所以である。

肛門の壁を観察した後、脱肛する痔核では先端を痔核に当てて外に脱出させて脱肛の程度を観察することができる。これは、単に筒で肛門内を観察するタイプの肛門鏡ではできない、ちょっとした『技』なのである。

この技を正確に行うためには、患者さんに恐怖や羞恥心を与えることなく、痛みが生じないように愛護的に診察する必要があるのは、言うまでもない。