
「解剖学的に表情筋に乏しいから、笑う事はできない」というのを正解としては実もふたもない。
確かに、その通りかも知れないけど、動物それぞれにヨロコビをあらわす手段は持っている。
犬だったら尻尾をちぎれんばかりに振って、ヒュンヒュンと嬉し吠えをする。
そんな犬を見ていると、「ヨシヨシ」と頭をなでてやりたくなる。
トム君の場合は、いくぶん違う。
犬のようにストレートに感情を表現しない。
いつも人間とは一線を引いているかのようなスタンスは崩さない。
カタンと自作の猫用ドアをくぐって、トム君が部屋に入ってくる。
浪人OKはコタツに座って、孤独に勉強をしている。
トム君は近くに寄ってきて、背中がわずかに左の太ももに触れるくらいの体制で寝そべる。
外は寒かったのか、ズボンを通してひんやりとした感触が伝わってくる。
冷え切った毛並みを左手でそっと撫でると、すかさずゴロゴロという喉を鳴らす音が聞こえる。
きっとそんなときのトム君は、微笑んでいたのだろう。
でも、本当に微笑んでいたのは自分だったんだと思う。
*写真はcozyさんにお借りしました。
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