『国民のだれもが平等に、世界最高水準の医療を安価で受けることができる』
という優れた制度である。
患者さんは、どこの医療施設でも自由に受診できることを原則としているのだが、近年その制度が高騰する医療費の原因にもなっていると考えられている。
たとえば『朝起きたら、ちょっと頭が痛い』としよう。
Dr.OKなら、薬箱の頭痛薬を飲んでみる。
人によっては、近所のかかりつけのお医者さんに診てもらう。
極端に心配性で『そういえば、伯母さんは脳出血で手遅れになったんだ』なんて経験の
ある人は、速攻脳外科にかかり「MRIを撮ってくれ」と要求する。
脳外科の病院も大枚はたいてMRIを導入したばっかりだし、
「万が一にも患者さんの要望に従わずに大変な病気を見逃したら訴訟問題だ。」
なんてことでMRIを撮ると、保険から数万円が支払われることになる。
似たような例は、どの診療科でも起こっている。
国民の人口構成が若者の多いうちはまだ良い。
病気になりにくい若者が月々たくさん保険料を納めてくれて、保険を使う病気しがちなお年寄りは少ないという、昔の日本の姿である。
最近は、お年寄りが多く若者が少ない。
バリバリ働いて保険料を納めてくれる若い世代が少ない割に、病気になって保険を使うお年寄りの割合が高い、現在の日本の状況である。
今までと同じような体制では保険医療制度が資金面で苦しくなるので、まず考えれるのは
『軽い病気は自分で治せ』
という方針。
昔は胃潰瘍の特効薬だったガスターが、容量の少ないガスター10(病院では20を使う事が多い)を薬局で売るようになったのも、この一環である。
次に考えられるのは、
『何でもかんでも大病院行ったらあかん』
という方針。
最近、病院では紹介状がないと数千円の特別料金がかかるようになったのも、この一環である。
ではここで…
おしりが腫れて痛くなったらどうするか?
① テレビで『痔ぃにぃ~は、ボ〇〇ノォルゥ』とCMが入ったので、薬局に行ってさっそく購入。
② いつもかかっている内科の先生に相談したら『これつけなさい』と診察もせずに処方された薬を塗ってみる。ちなみに保険診療で薬局で買うより安かった。
③ 意をケッして『肛門科』という文字が看板に書いてある医療機関を受診して、肛門の診察を受ける。
ここでどの選択を取るかで、患者さんの運命が変わる事もあるので、要注意である。
(続く)
この記事へのコメント
同業者
生殺し(肛門手術の保険点数の大幅引き下げ)がつらいですね。
医師の我慢比べになりますからね