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外科医が開業を躊躇する理由の一つに『メスを捨てなくてはならない』という問題がある。 今まで大病院に属して、多くのスタッフと協力して患者さんの生死に関わるような大手術を行っていたものが、開業となると良くても小さな手術。 入院設備のないクリニックとなると、それこそほとんど手術という文字からは遠ざかる事になる。 消化器外科をやっていた医師が「胃腸科」 心臓外科をやっていた医者が「循環器科」 と、内科主体のクリニックを開業するのは良くみるパターンである。 クリニックの看板で「内科、胃腸科、皮膚科、泌尿器科・・・」とたくさんの診療科が列記されている最後に、遠慮気味に「外科」なんて書いてあると、元外科医として頑張っていた医師のこだわりと若干の寂しさを感じてしまう。 幸い、「肛門科」という診療科は、大きな設備がなくても手術ができるので、クリニックレベルでもメスを握る事ができる。 ただ問題なのは、術後管理。 肛門の中の血流の豊富な部分に傷をつけ、翌日からは毎日便が出るというのは傷に対しては最悪の環境。 ショックを起こすくらいの大出血もまれに起こる。 手術をしたのは良いが、夜中に大出血し救急車で運ばれることもある。 これが大病院勤務の肛門科医なら、緊急呼び出しに応じて病院に駆けつけ、当直のスタッフの協力を得てことなきを得る事が可能だが、医師は自分しかいないクリニックでは、責任ある対応が難しい。 これが病院がバックについてのサテライトクリニックなら、話は簡単である。 日帰りで行えるジオン注射による治療や、術後の出血の危険性のない手術ならクリニックで行える。 もう少し手が込んで、出血の恐れがある症例なら、母体となる病院へ紹介し自分で出張手術を行う事ができる。 メスを捨てることなく、自分の理想のクリニックを開く事ができる。 「先生の夢はなんですか」 突然、梅田先生がDr.OKの瞳を覗き込むように、真剣なまなざしで尋ねた? 「夢というと?」 「そう、自分でクリニックを運営するとなると、夢というか理想がより必要でしょ。まぁ、信念という言葉に置き換えてもいいですが・・・」 小さい頃から医者になると思い込んでいて、一時期は勉強不足から何年も浪人し、やっと医者になって専門家目指して突っ走ってきた。 そのモチベーションを維持していたものは何かと尋ねられたら、『人間が好きだから』ということに尽きる。 自分を信頼し、自分に助けを求めて集まってくる患者さんと気持ちを通じ合うこと。 あるときは真剣に、あるときは冗談を言って笑いながら、友人に似た感覚で診療できたら、それが夢である。 「先生、いい夢ですね。」 「患者さんとの信頼関係が、昨今、強く求められていることだと思うのです。」 そんなことを、ちょっとばかり熱く語ってしまって、照れくさかった。 ★Dr.OK開業物語はフィクションです。初めてお読みになる方は、こちらをご一読ください。 |
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