僕って、死ぬんですか?

Dr.OKが医学部卒業後外科医として5年過ごした病院は、救急医療に力を入れていた。
研修医の頃、当直をしていて満床になって入院を断ったら、翌朝院長に呼び出されて叱られた。
「病棟に処置室があるだろ。そこに朝まで寝かしておいて、お前がつきっきりで診とれ!!」

とはいえ、活気はあった。
救急医療の要を果たしているという満足感もあった。
救急隊からどんな連絡があろうと、
「まっかせなさぁ~い」
という気概もあった。

ある夜、20歳代で痩せ型の男性が運び込まれた。
自動車を運転していて交通事故を起こし、ハンドルでお腹を打ったらしい。
特に目立った外傷はない。
お腹を触っても、痛いという訴えもない。
血圧も安定していて、一見たいしたことはなさそうで、ホッとした。

「お腹のCTを撮りましょう」
と気の弱そうな男性に説明すると
「僕って、死ぬんですか?」
といきなり言われてぎょっとした。

「なに言ってるんですか、お腹を打ったから念のために撮るだけですよ。一晩入院したら、明日は退院してもらいますからね」
きっと、気が動転しているのだろう。
安心させようと思って、軽口をたたきながらストレッチャーを押しながら夜間でひっそりした廊下をCT室に向かった。

CT室では既に放射線技師がCTの電源を入れてスタンバイの状態で待っていた。
ストレッチャーからCTのベッドに移して、撮影を始める。
「5分くらいの辛抱ですから、スピーカーからの支持にしたがって息を止めてくださいね」
と技師さんが伝えて、全員操作室に退避した。

「息を吸ってー、ハイッしっかり止めてー」
ピピピピピピピピー。
CTが上半身から順に下に向かって撮られて行く。
モニターに映し出された患者さんの顔を眺めていて、何か異変を感じた。

「ちょっと撮影待って!」
ドアを開けて患者さんに近づいた。
「大丈夫ですか」
声をかけても返事がない。
顔を近づけると、息をしていない。
脈も触れない。
大急ぎで心電図モニターをつけると、心停止状態である。
CT操作室から技師さんが叫んだ。
「先生、大動脈破裂だ!!」

その後の修羅場は、思い出すだけでも悲しくなる。
あの男性は、自分の死期が近づいている事がわかっていたのだろうか。

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