Dr.OKの消痔堂日誌

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<<   作成日時 : 2006/04/16 09:46   >>

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早朝の手術室。
隣の手術室では既に全身麻酔の手術準備が始まっているのか、脈拍モニターの「ピッ ピッ ピッ・・」という単調な音が聞こえてくる。
痔関係の手術を行う部屋の入り口には、【 2,3手術室】という札が張ってある。
大きな部屋をアコーディオンカーテンで二分割し、手術台がそれぞれに設置されている。
一方で手術を行っている間に、もう一方で準備を行う。
医者は二つの手術台を行ったり来たりして、30分に一件のペースで手術をこなしていく。

「字音さん、おはようございます」
既に患者さんはベッドに横たわって点滴をしている。
「昨夜はよく眠れましたか?」
緊張した空気を少しでも和らげようと、積極的に話しかける。
「それでは、まず肛門に麻酔をかけますから、ちょっと注射を我慢してくださいね」
「よろしくお願いします」
やや震えるような患者さんの声から、相当緊張している事がわかる。

「局所麻酔の注射ください」
看護師さんから渡された注射器には、皮下注射に使う23ゲージの太さの針が取り付けてあった。
注射針の選択として間違いはないのだが、より痛みを少なく注射するために、細い針に交換することにした。
「27ゲージに代えてくれませんか。それとメイロンを1cc追加してください」
局所麻酔で日帰り手術をしている先生から教わった方法なのだが、メイロンを加えることで局所麻酔剤そのものの痛みを軽減できる。

肛門の周囲にまんべんなく注射していくことで、肛門の括約筋が緩み、痔核の大きさや位置があらわになった。
ためすすがめつ肛門内を観察し、正確に痔核を把握する。
ひとつの痔核に4ヶ所の注射を規定どおりに行う必要がある。
注射の量も『痔核の大きさに1mlを加えた量』などというところもある。
今まで痔核の大きさが何mlかなんて考えた事もなかったので、かなりのプレッシャーを感じる。

意を決して、一番大きな痔核から注射を始める。
「痛みはありませんか?」
「全く感じません」
注射している内痔核自体、痛みを感じる神経が無い上に肛門周囲に麻酔してあるので、痛みを感じる道理はない。
ただ、手術中お互いを信頼しなければならない患者さんと医師の絆を確認するためにも、声をかけることは必要である。

手術と比べるとわずかな時間のはずだが、2ヶ所の痔核に注射が終わる頃には額にうっすらと汗をかいてしまった。
『薬液を注射後、薬を浸透させるために、充分に局所をマッサージする事』
と指示書には書いてある。
肛門に指を入れると、本来の内痔核はスポンジのように柔らかく指の感覚では存在がわかりにくいのと比べて、注射した部位がはっきりとした塊りとして触れる。
念入りに各所数分のマッサージを行い、注射療法は終了した。
「どうですか気分は」
「別になんともありませんでした」
「麻酔の注射は痛かったですか?」
「おかげさまで、想像していたより痛くありませんでした」
「それでは、手術が終わったら説明に行きますから、ベッドで休んでいてください」
一通りの決まり文句のような挨拶が終わって、患者さんはストレッチャーに乗って静々と手術室を後にした。

★Dr.OK開業物語はフィクションです。初めてお読みになる方は、こちらをご一読ください

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