流血試合で手に汗をかいた日

昨夜は新宿歌舞伎町のFACEで、全日本キックボクシング大会
いつもやる「格闘技の殿堂」後楽園ホールと違って、医務室もなければ医務室担当の看護婦さんも当然いない。
けが人が出れば、リングドクターチーム3人で何とかするしかない。

キックボクシングの選手。
試合に出て高額のファイトマネーが出るわけではないので、怪我をして病院にかかれば足がでる。
そんな選手を無料で治療するのも私たちの役目である。

医務室が無いと聞いていたので、大量の医療器機材を持ち込んだ。
特に、キックボクシングは『肘打ち』という決まり技があるので、コメカミを強打されて傷を作る事が多い。
出血のためドクターストップになればTKO負けとなるので、選手も一発逆転の技として充分に練習している。

特に、ムエタイ戦士であるタイ人の選手。
肘にカミソリが入っているのではないくらい、首相撲(首を抱えるクリンチのようなもので、膝蹴りが効果がある)から逃れるほんの一瞬をつき、正確にヒットを入れてくる。
押し気味に試合を運んでいた日本人の選手が、一瞬の隙に切り裂かれドクターストップTKO負けとなった試合も、一度や二度ではない。

画像昨日は、そのような恐ろしいタイ人の選手は出場しなかったが、こんな日に限って大会前半から怪我人の続出。
縫合セットが次々と開封されていく。
もうこれで最後の第8試合に悲劇は起こった。
スーパーウェルター級のチャンピオンを賭けたトーナメント戦。
3ラウンドまで優勢に試合を運んでいた望月選手がバッティングで額を大きく切った。
残り時間は1分あまり。
このまま終われば判定勝ちの公算も大きいと思われた。

画像「ストップ」
レフェリーが試合を止めて、ニュートラルコーナーでドクターチェックとなる。
幸い、傷は大きいものの浅い傷だったので、圧迫する事によって出血は少なくなった。
続行頑張れよ!」
周りの大歓声にかき消されて、望月選手意外には聞こえない声援を送る。

左目は望月選手の額を凝視し、右目は会場に表示されている残り時間を追う。
「あと50秒、あと40秒」
ぐっと握った手には、じっとりと汗をかく。
残り30秒台になって、急に出血が増え額を赤く染める。
「ドクターチェック!」
再度、ニュートラルコーナーに上ると、おびただしい出血が止まらない状態。
「ストップ」
大きく腕で×印を作って宣言する。
選手はガックリして、ひざをマットにつけて肩を落とす。
チャンピオンに一気に駆け上がれるかもしれない、彼のチャンスはむなしく絶たれた。

試合が終わって、医務室で傷の手当てが始まる。
選手を気遣ってか、みな勤めて平静をよそおう。
そんな気持ちが選手にも伝わったのだろう。
縫合が終わって
「ありがとうございました」
と挨拶をする選手には、すがすがしい笑顔も見られる。
「また、次の試合頑張ってください」
Dr.OKはいつもと同じ挨拶で答える。

勝つ事は大切だが全てではない。
君たちはこうやって、大勢の人に生きる元気を与えているのだから。

この記事へのコメント

つん
2006年02月19日 19:15
昨日の医務室は入ってビックリしました。あれじゃ、ドクターも選手もキツイですよね(^_^;)
2006年02月19日 20:07
格闘技の常設リングが設けてある施設にしては、選手控え室も狭いし、医務室もなくてレフェリーの控え室と一緒というのも・・・
でも、ラウンドガールの人たちの控え室(着替える部屋は違うのが残念
(。_゜☆\)
も一緒だったのは(*^_^*)でした。
つん
2006年02月20日 01:42
そうそう、今回のラウンドガールに許可をもらったので、ホームページ更新時に写真を載せます(*^_^*)
2006年02月20日 13:06
それは嬉しい。
でも、遠慮なくタバコ吸われるのには閉口したなぁ。
ゲホゴホゲホ
レッドスネークカモン
2006年02月23日 08:02
先生が、選手にだけ聞こえる小さな声で頑張れよと声をかけた部分でジンとしてしまいました。
残り30秒でストップだなんて悔しいでしょうね。望月選手のこと応援したくなりました。次回頑張れ!!!

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