君の夢は

私の抱負は『夢を大切に』です。
憧れのマドンナは、涼しいまなざしで答えた。
中学校のホームルームの時間、「今年の抱負」を発表していたときの事である。

彼女は書道家の娘で、自分もかな作家になる事を夢見ていた

「数学のテストで100点を取りたい」
「部活でレギュラーになりたい」
まだ、子供らしさが残っているクラスメイトたちが現実的な抱負を次々発表する中で
『夢を大切に』
である。

まだまだ、どこをとっても、おこちゃまOKには
「気取ってらぁ」
と思う反面、何か先を越されているような焦りを覚えた。

時は過ぎて、医学生OKの最終学年。
相変わらず眼前直視型の人生観を持って、日々暮らしていた。
刻々と迫ってくる医師国家試験のプレッシャーに耐えながら、青息吐息の生活をしていた。
「最近、不眠症なんだよね」
親友のトリイ君に話すと。
「『フラッシュダンス』観たかい?あれはいいよー。僕なんか3回も観ちゃった」
といつも笑顔を失わない、彼独特のアドバイス。

試験準備で時間が惜しいのに、やはり才能のある人は違うのかなぁ
と思いながらも、こっそりと映画館に足を運んだ。

うわさを裏切らない、軽快な音楽とダンスシーンが続き、エンターテイメントとして気分転換にはもってこい。
プロのダンサーになるため、難関ダンス学校を受験しようとしている主人公の汗と涙の物語が、医師国家試験受験にだぶって、素直に感情移入できた。
物語が進んでいって、主人公がダンス学校受験の重圧に負けそうになり、辞めようかと悩んでいるとき、恋人の男性が言った
”When you give up your dream, you die”
「夢を捨てるのは、死ぬことと同じだ」


目前の困難を突破するために必要な、遠いはるかな夢。
マドンナの境地にようやく達した事に気づいた。

時はさらに移り、先日の同窓会で30年ぶりにマドンナに会えた。
昔と全く変わらない(と、Dr.OKには思えた)涼しいまなざしがあった。
挨拶とともに、近況報告。
偶然にも、彼女の息子さんはDr.OKの母校の医学部6年生。
国家試験対策で大変な毎日らしい。
「普通にやっていれば合格できるから、大丈夫ですよぉ」
自分の苦しい経験はすっかり忘れて、無責任なアドバイスをするのも、ご一興。

「ところで、書道はまだ続けられていますか」
「子供が生まれてから、すっかりやっていません。泣いている子供をほっておいてはできませんよね」

ひゅゅゅゅぅぅぅぅ~~~~~

心の中につめたい風が吹いた。
「で、でも、息子さんも大きくなって、また始められますよね」
しどろもどろになりながら、気持ちが半歩あとずさった。

「君の夢は、どこへ行ってしまったんだぁぁぁ」
いや、それは言うまい。
熱のでた子供を人任せにして、仕事に出かけてしまう男に、それを言う資格はない。
今はひたすら、夢を追いかけられる自分の運命に感謝して、一日一日を精一杯生きよう。
人生を光り輝かせるために。

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この記事へのコメント

2005年11月29日 01:41
女性の夢は「子供」になってしまうのではないでしょうか?いい意味で。
それに書道とは比べものにならないほどの作品を彼女は作り上げたと思います。
2005年11月29日 09:06
そうなんですよね。
それがあるから、人類は脈々と繁栄を続けられるのだと思います。

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