コロナ時代の大腸肛門科(血栓性外痔核、かんとん痔核)

これらの病気は、肛門の血管で血の流れが悪くなるによって血の固まり(血栓)ができ、痛みを伴う腫れを生じます。腫れと痛みは同時に発生し、急に症状がでるのが特徴です。しかしその痛みも発症一日から二日目あたりがピークで、その後は徐々に弱くなっていきます。
肛門の外だけ腫れたものを血栓性外痔核、肛門の中から外まで腫れたものをかんとん痔核といいます。

血栓性外痔核は、肛門の外の部分が腫れているわけですから、押し込んでも肛門内に入りません。よく見ると、皮膚を透かして黒っぽい血栓が見えることがあります。DSC_0087.JPG

また、皮膚が薄くなってやぶれると、血栓が溶けて黒っぽい血が少量出ます。この場合は排便後に洗浄すればよく、消毒は必要ありません。入浴も問題ありません。DSC_0058.JPG

かんとん痔核は、肛門の外が大きく腫れている場合は、無理に押し込んでも痛みが強く、すぐに出てきてしまいます。簡単に肛門内に戻すことができ痛みも軽くなるなら押し込むのもよいですが、痛みが強い場合は出たままでも構いません。kanton0.jpg
白い矢印の部分は、血栓が露出している部分で、このタイプのかんとん痔核は、にじみ出る程度の出血を伴います。


これらの病気は、腫れた部分に市販の痔の軟こうをつけ温めることで、腫れや痛みは徐々に少なくなっていきます。長時間座っていたり立っていると肛門部分のむくみが取れないので、できるだけ横になっていた方が早く良くなります。
痛みは数日から長くても1週間くらいで引きますが、腫れが完全に治まるには数週間かかる場合もあります。

コロナ時代の大腸肛門科(はじめに)

Dr.OKの専門分野である大腸肛門外科では、直接新型コロナウイルスに関与する病気は扱っていないので、緊急事態宣言が発令され「不要不急」の外出を避けることが求められた以降も、一定の患者さんが受診されていました。しかし患者数が増加するにつれて減少傾向にあり、早々に受診したほうが良い患者さんも受診を控えるような事態になりつつあります。

大腸肛門科の病気でも、数日我慢したら余病を併発し命取りになるようなものもありますから、あなどってはいけません。

大腸肛門科の病気で、しばらく薬局で購入できる薬を使って様子を見ても良い病気と、急いで専門病院を受診して治療を開始すべき病気を、腫れ、痛み、出血の症状から判断できるよう、数回に分けてアドバイスします。

ただし、症状だけから正確に判断することはできません。間違っている危険もありますから、ご心配な方は病院を受診してください。きっと通常の混雑がウソのように空いていて、待ち時間も少ないと思いますよ。(^_^)v

新型コロナ感染症の影響

西新井大腸肛門科の外来患者数はおおむね3割減のため、『三密の禁』はおのずと守られ、空いている待合室で待ち時間も短くなっているようです。
換気を徹底しているため、春なのに寒いのが欠点。医Dr.OKも半そでのスクラブだけでは指先が冷たくなるので、コートタイプの白衣を愛用しています。('◇')ゞ
対面の会話を余儀なくされるため感染の危険性がある受け付けは、テーブルクロス用の透明シートを天井から張り巡らせて飛沫感染の防止をしています。昔の病院の受付が小さな窓口だったのを思い出して、空気感染する死の病だった肺結核の予防だったのかと思いめぐらせています。
痔の手術は不要不急のはずですが、「仕事が暇なうちに、長年患った痔を治しておきたい」という希望の患者さんがちらほらいらっしゃって、意外に手術件数は、今のところ減っていません。

前期高齢者の再スタート

2020年4月、Dr.OKは65歳の誕生日を迎え、めでたく「前期高齢者」となりました。
65歳というと定年退職して、中には悠々自適に趣味の生活を満喫している方もいるようですが、まだまだ医師としての仕事に生きがいを持っているDr.OKは、引き続き西新井大腸肛門科でフルタイム週休0.8日で働く事となりました。
年齢を重ねることによって気づく事も多く、ブログも久しぶりに書き続けてみようかと思っています。
新たなケツイを持って、再スタートする消痔堂日誌をよろしくお願いします。

西新井大腸肛門科的こころ

痔というものは、ありふれた病気です。
しかし『口にするのも恥ずかしい』病気だと思われがちのためか、誤った知識が横行している病気です。
また、命にかかわることの無い『良性の病気』であるからか、医学でも隅に追いやられ、医師の中でも誤った知識をもとに誤った治療を行い、患者さんを不幸にする可能性のある病気です。
このブログでは、痔の正しい知識はもちろんの事、痔という病気に対する考え方、いわば『こころ』についてつづってい行きたいと思います。

新しい痔核手術の開発

わが国の痔核手術の主流は、痔核を縦方向に切除する結紮切除術です。
肛門科専門医の間では、さらに痔核を切除した後の傷を縫い合わせる『半閉鎖式結紮切除術』を採用している医師が多くいます。

ただ、この手術は輪郭が書いてない紙から切り絵を行なうような、数多くの経験と才能が必要です。
縫い合わせた傷が開いてしまえば、術後の出血や痛みを増すことにもなりますし、肛門狭窄という重大な後遺症を残す危険性もあります。

それで『半閉鎖式結紮切除術は熟練が必要である』などと、学会などでも評価され、
「どうせ縫っても、途中で開いてしまうのだから、私は縫いません」
などと公言する専門医もいらっしゃいます。

私は、痔核というのはありふれた、ポピュラーな病気なんだから、特別の才能や数多い症例数を経験できるような環境になくても、普通の外科的技術を持った医者が容易に習得できるのがスジではないかと考えています。

また、お師匠様のところに通い詰めなければ学べないようでは、標準的な手術とは成り得ません。

そこで三年くらい前から、様々な学会や研究会でビデオを使って新しい術式である『トライツ筋温存式結紮切除術』を発表してきました。
しかし、外科医というのは職人気質から『自分の手術で何も困っていないから、今更新しい手術を導入するのもどうか』と思っているのでしょうか、ほとんど反応がありません。

そこで、これから痔の手術を学ぼうとしている医師に新しい手術法を伝えるためにYoutubeを使うことを思いつきました。
まずは、イラストを使って手術の原理と成績を示したビデオを作成しましたので、ご覧ください。
https://youtu.be/xCwOySy85kQ

さらに手術ビデオから学ぼうと思われる方には、『サルケツチャンネル』に、いろいろな形の痔核をトライツ筋温存式結紮切除術で行っているビデオを集めました。
こちらは、出血シーンもありますので、自信のある方だけどうぞ。
https://www.youtube.com/channel/UC9N70hg_nCHTHksGoDwPe7w

ジオン(ALTA)と手術の併用療法についての私見

痔核が大きくなって、肛門外に脱出し、押し込まないと戻らない(腫れている場合を除く)ようになると、薬の治療では限界となってくる。

もちろん、痔核は良性の病気だから
「ワシ、気にせんもんね、毎朝押し込んだらええもんね」
という方は、『痔核と共にある人生』を楽しんでもらえばよい。(;^_^A
そうでない方に行われている治療法の代表的なものに、手術療法とジオン(ALTA)による効果療法がある。

手術は痔核を切り取ってしまうわけだから、確実な治療法である。
しかし、痛みや出血、術後の狭窄などの後遺症など、術者の腕前が大きく左右する治療法である。

ジオン(ALTA)は、痛みを感じる神経のない内痔核部分に注射して炎症を起こし、治る過程で痔核を硬化させて縮める治療法である。

Dr.OKはジオンが発売される前に臨床試験医として使ってみたので、注射の翌日には痔核が出てこなく痛みも無いという『奇跡的効果』に驚いた経験がある。
しかし発売後に製薬会社が調査した成績では、1年後の再発が14%程度となっているので、確実な治療法とは言えないのが欠点である。

また最近、添付文書の「重大な副作用」の項目に「直腸膣瘻」(ジオン注射部位と膣の間に穴があいて、便が膣から漏れる)が追記されたので、より慎重な取り扱いが必要である。


痔核が脱出するくらい大きくなると、肛門の外の外痔核と内部の内痔核が一体となって脱出する場合がほとんどである。
ジオン(ALTA)は『脱出を伴う内痔核』に効能があるわけだが、それでは十分に脱出症状を治すことができない。
そこで、内痔核にジオン(ALTA)を注射すると同時に、外痔核は手術的に切除するという併用療法が行われている。

ジオン(ALTA)のは、痛みを感じない内痔核に注射して脱出を治療し、翌日から痛みも腫れもなく日常生活に戻れるのが最大の長所なのだが、わざわざ痛みを感じる外痔核を切除するのでは、本末転倒のような気がする。

また手術に不慣れな医師が外痔核に対して稚拙な手術を行ったり、必要のない外痔核切除が行われている事が懸念される。